売買契約書を電子化するメリットは、業態によっても異なります。このページでは不動産会社の売買契約書を電子化したらどのようなメリットが待っているのかをまとめています。
不動産業界は売買契約書の電子化が遅れています。
業界の動きが鈍いのではなく、「不動産売買契約書(宅建業法37条書面)」、「重要事項説明書(宅建業法35条書面)」が、法律にて「押印」、「書面(紙)による交付」が義務付けられていたからです。
つまり、業界が電子化を望んでも法律によって阻まれていたので、電子化が遅れ、従来同様紙面でのやり取りが行われていました。
不動産業界としても決してITやDXに対して二の足を踏んでいた訳ではなく、例えばインターネットを活用した内見の実施、WEBサイトを活用した内見予約等は従来も行われていました。
しかし、契約締結に関しては紙面への押印が義務付けられていたことから、どうしても「契約時は足を運ぶ」が半ば義務となっていました。
遠方の場合、書類を郵送してくれる不動産業者もありますが、親切な行為ではあっても、書面に押印しなければならない点は変わりません。
2022年5月、押印義務の廃止、書面交付義務の緩和を盛り込んだ法改正が行われたことで、重要事項説明書や賃貸借契約書、マンション標準管理委託契約書、不動産特定共同事業契約に関わる書類、鑑定評価書等の電子化が可能になりました。
これまでは法律(ルール)によって電子化が阻まれていましたが、ルールが整備されたことから、今後は不動産業界も電子化が進むのではとの期待が高まっています。
参照元: すみかうる|不動産売買で「電子契約」が可能に!法律改正で2022年5月18日から(https://t23m-navi.jp/magazine/editorial/news/electronization/)
法律が整備されたことで電子契約解禁の期待が高まりました。
そして2022年5月、全面解禁されました。
契約時の押印廃止、売買契約時の電子署名交付が法律の面から可能になったことで、不動産取引では完全な電子化が実現します。
ただし、それ以前から法律面で禁止されていない点に関してはオンライン化が進んでいました。つまり、決してオンライン化に対して背を向けていたり、旧態依然を守ろうとしている保守的な業界ではなく、顧客の利便性を高める新しいサービスは積極的に導入する業界であることが伺えます。
そのため、前面解禁となった2022年5月から早速電子契約を導入している不動産業者も多いです。このような動きから、まだまだ電子契約を導入していない不動産業者も、今後売買契約書の電子化を導入することが予測されますので、法改正を機に不動産業界の電子化がさらに加速することが予想されます。
売買契約書を電子化することで得られるメリットについて、ご紹介しましょう。
売買契約書の電子化は業務効率の改善をもたらすことでしょう。
なぜなら、オンラインでの契約業務が可能になるのです。これまでは部分的にはオンラインで可能ではあっても、最終的には必ず紙面への押印が必要でした。
店舗まで足を運んでもらい、押印するので店舗営業時間内にお客に足を運んでもらうか、あるいはお客の元に出向く必要がありました。
しかしこれらがオンライン上で可能になりますので、わざわざ時間を割く必要がありません。
お客にとっては都合の良い時間に電子契約に署名を入れるだけで良いのですし、不動産業者側は相手が作成した電子契約書を確認するだけで良いのです。
その間、他の業務も行えることでしょう。
売買契約書には収入印紙が必要でした。
収入印紙とは、印紙税の支払い方法ですが、電子契約書には収入印紙が不要です。
なぜなら、印紙税とは「作成された書面」に対しての課税です。契約書だけではなく、作成された紙の書面に対して支払う義務のある税金でした。
しかし電子契約書は紙ではありませんので「作成された書面」に該当しません。ちなみに電子契約書をプリントアウトしても収入印紙は不要です。
この点は国税局や国会答弁においても明文化されているので、電子契約書を導入するだけで収入印紙代の削減が可能です。
売買契約書を電子化することで、インターネット上での管理が可能になります。
紙の契約書の場合、保管そのものは簡単ですが確認するとなれば保管されている場所まで足を運び、該当する契約書を探す必要がありました。
多くの契約書を保管している業者であればあるほど、手間がかかりましたが電子契約書であればデータで保存されていることでしょう。
そのため、管理業務負担が大きなものになりますが、電子契約書であれば保管場所まで出向く必要はありませんし、検索をかけることで該当データをすぐにチェックできます。
売買契約書の電子化には多くのメリットがあることが分かっていただけたかと思いますが、一方で注意しなければならない点もあります。
売買契約書を電子化は、データとして保存することになります。
つまり、セキュリティ次第では情報漏洩のリスクが高まります。保管していた外部記憶メモリーを紛失してしまったり、セキュリティを意識していたものの、IDやパスワードが漏洩してしまえば、電子契約書にアクセスされてしまうリスクがあります。
お客に対して被害を与えることになるだけではなく、自社の評判・信頼性を損ねることになりますのでセキュリティ対策は必須です。
売買契約書だけを電子化しても完全なオンラインとはなりません。
売買契約書や重要事項説明、売買契約締結、媒介契約締結といった関連する契約も電子化することで完全なオンラインとなります。
そのため、業務フローを整えましょう。
売買契約書だけを電子化するのではなく、何を電子化するのか。さらには電子化した部分は社内で業務フローとして整えることで、多くの人間が利便性を享受できます。
一部の人間だけが享受できるものでは、業務効率化も中途半端なものになってしまいます。
不動産売買契約にて電子化できる書類として、売主・買主それぞれが契約締結時に発行される媒介契約・代理契約締結時書面、レインズ(指定流通機構)への登録を証明する書面、契約・物件への重要事項を説明した書面となる重要事項説明書、宅建業者が売主・買主それぞれに交付する契約書である契約締結時書面が挙げられます。
収入印紙・印鑑証明が不要となりますが、一方的な電子契約締結は認められていません。
電子契約は当事者間の同意も必要になりますので、まずは相手に電子契約でもよいのか、合意を得ることが大切です。