自社と相手企業との取引に関する約束事をまとめた契約書。事業の根幹をなす書類だからこそ、現場では細かい悩みが多々生じるものです。契約書に関する主な悩みや対処法の概要を見ていきましょう。
契約書をファイリングする際には、五十音順や時系列など、一定のルールに従って並べるようにします。また、原本には穴あけをせず、かつ施錠可能な場所に保管するなど、適切な管理を行いましょう。
ただし、紙ベースの契約書を保管する上で、紛失や内容改ざんなどのリスクをゼロにはできないことも事実。保管スペースや保管の手間の問題もあります。契約書の保管に関する各種問題を解消するため、電子契約書の導入も検討してみましょう。
契約書の保管期限は法令により異なります。
会社法では「事業に関する重要な資料」を10年間保管するよう規定。契約書も「事業に関する重要な書類」に該当します。
法人税法では、法人税法施行規則第59条により、契約書の保管期間を7年と規定。7年の起算日が特殊なので注意が必要です。
なお、電子契約書の保管期間は紙ベースの契約書の規定が準用されます。会社法であれば10年、法人税法であれば7年です。
※参照元:印紙税法 e-Gov法令検索より(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086)
※参照元:No.5930 帳簿書類等の保存期間 国税庁より(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5930.htm)
契約書を紛失した場合には、誠意をもって取引先にその旨を伝えるとともに、取引先の了承のもと、契約書の再発行を行いましょう。
改めて契約書を作成し直しても良いのですが、自社が契約書のコピーを保管している場合や、取引先が原本のコピーを提供してくれる場合には、法的に有効な形式で謄本を作成しても良いでしょう。もとより、契約書の紛失リスクをなくすため、電子契約システムの導入も検討してみるようおすすめします。
甲と乙が逆になるなどの誤字・脱字、「相応と見込まれる」などの不明慮な表記、専門用語の誤用、条項間の矛盾、自社に対する極端に不利な内容など、専門家が契約書をチェックした際、不備と言わざるを得ない様々な問題が見られることがあります。
自社にも取引先にも重要な契約書だからこそ、契約内容の重さに応じ、弁護士などの専門家からリーガルチェック等を受けておいたほうが良い場合もあるでしょう。無駄な紛争に発展させないためのコストは必要経費です。
契約書には法律で決まった厳格な書式があるわけではありませんが、自社と取引先にとって重要な書類である以上、誤解・誤認の余地を残さないよう明確な内容・表記で作成しましょう。
例えば、自社と取引先との間に暗黙の了解ワードがあったとしても、契約書では第三者が見て分かる正しい言葉を使います。数量化ができる部分については、文字だけではなく可能な限り数字も併記しましょう。作成した契約書は、改めて当事者間で1つ1つ確認の上、印鑑を押して有効化させます。
電子契約においても、違約金の取り決めが可能です。違約金とは、契約違反があった場合に違反した側が支払うべきお金のこと。多くの場合違約金の上限はありませんが、業界によっては上限が定められていることも。
なお、違約金は債務不履行責任や不法行為責任に該当する場合に発生します。契約書には違約金についての記載を行い、トラブル時に備えましょう。違約金の条件や相場は職種によって異なるため、事前にチェックしておくことが大切です。
契約書を自作する際、雛形をそのまま流用すると効力が弱くなってしまうことがあります。また、商品や損害賠償の内容が曖昧な場合、紛争時に不利になってしまうことも。契約書の内容は自社に合ったものを作成し、商品や損害賠償の範囲を明確に記載しておきましょう。
なお、見積書やメールの送受信記録では契約書のような効力を発揮できないため、効率化を図る場合は電子契約がおすすめです。
契約書に「甲乙」を用いることで、当事者の正式名称を何度も記載する必要がなくなります。そのため、短い文章で読みやすい契約書を作成できるでしょう。
また、甲乙には優劣はないといわれています。そのため、自社を甲乙のどちらで表しても問題はありません。ただ、甲乙は古代中国の思想である十干に由来しており、数字で表すと甲が1、乙が2と考えられます。そのため、自社をへりくだって表す「弊社」を甲乙に当てはめる場合、自社を「乙」と表した方が無難といえるでしょう。
契約書の末尾には、後文を記載します。後文には契約締結日や締結方法、契約書の保存方法などを記載されており、当事者の合意のもと契約が成立していることを証明する役割があります。
後文では、契約書の作成目的や作成通数、契約書の作成者や保有者を明記しておくことが大切です。なお、電子契約の場合は記載すべき内容や用語が紙の契約書とは異なります。紛争時にも契約書が効力を発揮できるよう、適切な用語を選択し、必要な内容を記載しましょう。
契約書の訂正内容に法的効力を持たせるには、すべての当事者の合意のもとで行なわないといけません。契約書の訂正方法としては、主に訂正印または捨印による訂正の2つ。そのほか一部変更契約や全面変更契約を締結して訂正するという方法もあります。契約書を訂正するにあたって契約内容が改ざんされてしまう恐れもあるため、契約書を訂正する際は変更内容をしっかりと確認するようにしましょう。
契約書を2部以上作成する際、どちらか一方にとって都合の良い内容に改ざんされてしまう恐れがあります。そういったトラブルが発生しないように、契約書の同一性や改ざんされていないことを証明する割印が必要とされているのです。一方で、割印は当事者全員の押印が必要となるので、面倒に感じている方もいるでしょう。そういった方は、割印が必要ない電子契約をおすすめします。電子契約は不正アクセスを検知できるほか、変更者や履歴を把握でき、割印がなくても改ざんや偽造防止につなげることが可能です。
契約書を郵送する際には注意点とマナーを押さえなければなりません。契約書は信書として取り扱われており、定められた方法で送付します。認められていない宅配便やメール便で送ると、違反とみなされ、配送者や依頼者が罰せられるでしょう。
また、契約書を郵送する場合、クリアファイルで挟んで封筒に入れることで安全性が増します。送付状を添える他に、返信用の封筒や押印の順番に注意しましょう。たとえば官公庁の場合、民間企業が先に押印するというルールがあります。
契約書はPDF化できます。ただし、契約書をPDF化して保存するなら電子帳簿保存法の要件を満たさなければなりません。PDF化はスキャナと電子契約サービスによる2種類の方法で可能です。PDF化することで印紙代や紙代や印刷代、郵送関連のコストや手間を削減できます。契約の効率化の点もメリットです。管理の負担を軽くできるなどメリットもたくさんあります。
一方のデメリットとして紙の契約書からPDFにした場合、原本のコピーとみなされる、デバイス次第で見づらいことが挙げられるのです。
契約書はリーガルチェックが必須です。契約書の内容には法律に関するものも含まれています。リーガルチェックをしないと法律に違反する内容が含まれていた場合、契約自体が無効になる可能性があるのです。結果、自社や取引先にまで迷惑をかけます。違反があるような契約書だと、社会的な信頼性も失いかねません。リーガルチェックは、外部の弁護士や、自社の法務部に依頼します。複雑な内容なら外部弁護士と自社法務部両方への依頼が必要です。