2部以上の契約書を作成する場合、すべての契約書にまたがるように押印する「割印」。当事者全員の押印が必要となるため、面倒に感じている方もいるでしょう。ここでは、契約書における割印の必要性について解説します。
契約書において割印が必要とされる理由は、契約書の同一性と改ざんされていないことを証明するためです。
割印がないと、契約を結んだ後に自身や自社にとって不利な内容に改ざんされたとしても、それを証明するのが難しくなります。割印があれば契約書が改ざん、またはコピーされていない証明になり、契約に関するトラブルが発生した場合も契約の正当性を主張することが可能です。複数部または対になっている契約書がある場合は、トラブル防止として割印をしておくことをおすすめします。
割印は契約書を2部以上作成する際に、複数の契約書にまたがって押印します。そうすることで複数の契約書が同一の内容または関連した内容であることを証明でき、契約書の改ざんを防ぐことができます。割印しなかったとしても契約書の法的効力に影響はありませんが、トラブルを防ぐためにも割印の必要性は十分にあると言えるでしょう。
割印は、複数の契約書にまたがって押印するのがルールです。割印したい書類を上下や斜めにずらして押印するのが一般的で、すべての書類にまたがるように上部に押印します。このとき契約する当事者全員の押印が必要です。割印に使用する印鑑は、契約印と同じものを使うようにしましょう。2つ目以降の割印を押す場合は、すでに押されている割印がずれないように書類の位置を調整しながら押印します。
契約書に関連する押印方法には、割印のほかにも契印や捨印、消印、捺印・押印があります。それぞれの押印方法の役割について見ていきましょう。
割印とは、2部以上の契約書にまたがって印影が残るように印鑑を押す方法です。割印をすることで複数の書類が同一の内容または関連した内容であることを証明でき、書類の改ざんやコピーを防ぐ役割があります。契約書に関するトラブルが発生したときに改ざんされていない正しい契約書だと主張できるようにするためにも、2部以上の契約書を作成する際は割印を押すようにしましょう。
契印は契約書や申請書などが複数ページある場合に、ページの間や袋とじ部分に押印する方法です。契印によって書類がひと続きであることの証明になり、途中のページの差し替えや抜き取りといった不正行為を防ぐ役割があります。契印と似た言葉に契約印がありますが、契約印は契約の時に使う印鑑を指すもので、契印とは別の言葉です。
契約書の内容を変更する場合、訂正箇所に訂正印を押し、二重線を引いたうえで修正するのが一般的な方法です。けれど、修正が必要となるたびに相手から訂正印をもらう手間がかかるため、訂正印がなくても契約書の内容を変更できるようにしたのが捨印です。書類に余白部分にあらかじめ捨印を押しておくことで、相手から訂正印をもらわずに契約書の内容を変更できるようになります。
ただし、捨印には契約書の内容を相手が一方的に変更してしまう恐れがあるので、相手から捨印を求められた場合でも、安易に押印しないようにしましょう。
消印は、契約書に収入印紙を貼付した際に、契約書と印紙にまたがって押印することです。消印には印紙の再使用を防ぐ目的のほかに、印紙税を納付したことを証明する役割もあります。なぜなら契約書に印紙を貼るだけでは印紙税を納めたことにならず、消印することで納付したことになると印紙税法で決められているからです。そのため、消印がないと印紙税を納めていないことになるので注意しましょう。
捺印と押印はどちらも印鑑を押すという意味の言葉です。捺印は「署名捺印」という言葉が省略されたもので、自筆の署名とともに印鑑を押す場合に使用します。押印は「記名押印」を省略したもので、自筆以外の方法で記名された書類に印鑑を押すことを指します。厳密には違う言葉ですが、押印と同じく「印鑑を押すこと」自体を捺印と呼ぶこともあるようです。
割印を忘れてしまったとしても、契約印や署名があれば契約書の法的効力がなくなるといった心配はありません。あとから割印することも可能なため、タイミングや状況を見ながら相手に相談すると良いでしょう。ただし、あとから割印をする場合は、契約書の内容が一方的に変更されていないか念のため確認する必要があります。
割印をうまく押せずに訂正する場合、失敗した割印はそのままで、別の場所に割印をします。失敗した割印に印鑑を重ねるように押し直すという方法は、完全に重ねるのは不可能なため、不正を行ったと取られかねません。また、訂正印のように二重線を引く方法も避けたほうが良いでしょう。
文書をデータ化する電子契約の場合、不正アクセスを検知でき、さらに変更者や履歴も把握することが可能です。そのため、割印がなくても契約書の改ざん防止や偽造につながります。また、紙の契約書と違って用紙の購入費や印刷費、郵送費、収入印紙が必要ないというのも電子契約ならではのメリットです。
ただ、電子契約サービスの利用料金がかかるため、電子契約を導入するのであれば各サービスの費用対効果を比較検討したうえで、利用するサービスを決めましょう。