契約書の後文(こうぶん)は、契約書の締めとして最後に記載される文章です。後文には、契約締結日や手段、保存方法、当事者の署名欄などを記載します。
ここでは、契約書の後文に必要な内容のほか、電子契約における後文について紹介します。
書面契約における後文は「合意をしたうえで契約が成立していることを証明する」「契約の日時の明確化」「契約書の保管方法の整合を図る」といった意味をもっています。
書面契約の後文には、契約書を作成した目的を記載しましょう。契約の内容や取引の背景について触れ、なぜ契約を締結する必要があるのかを明確にします。書面契約を作成する目的が明確になることで、契約の範囲や性質が明らかになり、契約の透明性や法的な正当性を確保することが可能です。
作成目的が明確に記載されていない契約書では、トラブルの発生や不明瞭な点が生じる可能性があるため注意しましょう。
書面契約の後文には、契約書類の作成通数も記載します。契約書類は計2通を作成し、当事者それぞれが1通ずつ保管することが一般的です。たとえば契約書類が1通しかなければ、所有していない側は契約の締結事実や内容を確認することが難しくなります。そして、契約書の内容を改ざんされても気づくことができないでしょう。
そのため、当事者の数によって必要通数の契約書を作成し、作成通数を明確に記載することが大切です。法的な効力を保証できます。
作成者とは、契約書を作成した当事者のこと。また、保有者とは、契約書の原本を保管する当事者を指します。
契約書においては、誰がこの契約書を作成し、原本を誰が保管するのかを明らかにする必要があります。作成者と保有者を明記することで、契約における役割分担が確立されます。
もしも契約締結後にトラブルが発生し紛争になった際、契約書の作成者と保有者が明確になっていることで、契約の信頼性と法的根拠を示すことができます。
契約書の後文には、締結方法も記載します。締結方法とはどのような手順で契約を確定させるのかであり、契約書の交付や受領、署名と捺印から郵送などの配達方法まで具体的に記載しましょう。
締結方法を明記することで、契約の成立手続きがどのように行われたかがわかり、契約の有効性の確保につながります。
契約が成立した日を後文に記載することで、契約の効力発生日や法的なタイムラインが確定します。
たとえば、契約によって発生する権利や義務、履行期限の判断などを行う際に「いつ契約が締結されたのか」がわからなければ、当事者同士の解釈が異なってしまうかもしれません。そのため、後文に契約締結日を記載することが大切です。
紙の契約書と電子契約書では、後文の書き方が異なります。そこで、電子契約を行う場合の後文の記載方法をチェックしておきましょう。
紙の契約書では作成枚数や保有枚数を後文に記載しますが、電子契約では記載不要です。電子契約では、電子ファイルを作成して契約を進めます。そして、電子ファイルには「容易に複製できるが、複製しても改ざんはできない」という性質があるため、作成枚数や保有枚数を明記しておく必要がないのです。
また「電子契約には印紙税がかからない」という点も関係しています。紙の契約書では1通ごとに印紙を貼る必要がありますが、印紙税が不課税になる電子契約では作成枚数を明記しなくても問題ありません。
紙の契約書では、記名押印やサインなどが必要です。そのため、契約書の後文に記載する締結方法では「記名押印により」「サインの上」といった文言が並びます。
一方、電子契約では電子署名が合意の意思を示します。そのため「電磁的記録を作成し、甲乙合意のうえ電子署名を施し、各自その電磁的記録を保管する」といった文章を後文に記載。電子契約特有のプロセスを契約締結方法として示すことで、電子署名に効力が生まれます。
電子契約においては、タイムスタンプの付与で契約締結日を確認できます。タイムスタンプは、「スタンプが付与された時間にその電子データが存在している」と示すことができます。
また、タイムスタンプに記載されている情報とオリジナルの電子データの情報を照らし合わせれば「タイムスタンプが付与された後に内容を改ざんしていないか」が確認可能です。そのため、タイムスタンプがあれば契約締結日を証明できます。
ただ、電子契約でも契約締結日を記載した方が無難です。契約が成立した日付を明記しておくことで、トラブル発生時にも効力を発揮しやすくなります。
「これまで紙の契約書を使用していたが、今後は電子契約を利用したい」というケースは多いでしょう。紙と電子では記載すべき文言が異なるため、適切な用語や記載方法を選択しなければなりません。以下に注意すべきポイントを紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
紙の契約書では「本書」「書面」といった文言を使用していますが、電子契約では「電磁的措置」や「電磁的記録」などの文言を使用します。また、電子データは「原本」であり、印刷した文書は「写し」。電子契約に移行する際は、電子契約に適した用語を選ぶ必要があります。
電子契約に移行したのに紙の契約書の文言のままでは、効力を発揮しないこともありますので注意しましょう。
先述していますが、電子契約においては作成枚数や保有枚数の文言は不要です。
紙の契約書には「本書を2通作成」というような記載があるでしょう。電子ファイルは「複製しても改ざんできない」という性質があるため、電子ファイルを何通作成しても原本と異なることがないのです。そのため、電子契約に移行する際は、作成通数や保有通数の記載は行いません。
紙の契約書と電子契約では、契約締結方法が異なります。紙の契約書では記名や押印が必要ですが、電子契約では電子署名が法的な効力をもちます。つまり、電子契約では電子署名を行うことで当事者が契約内容に合意したことを証明できるのです。
そのため、「記名押印し」ではなく「電子署名を施し」の文言が適切です。電子契約に合った文言を用いて締結方法を記載することで、「記名押印」と同様の効力をもたせることができます。